衆院外務委員会参考人質疑(斎藤議員)(産経新聞)

 【核密約】抄録(6)

 衆院外務委員会の19日の参考人質疑(日米密約など)で、斎藤勁議員(民主)が質問に立った。

 −−国民の立場にたった情報が長い間、公開されてこなかった。しかし(資料を)破棄した、あるかないか分からない、というやりとりがあったが、大変な問題だ。あったと記憶していることが、情報公開法施行前になくなったことについて、行政内部、政治がしっかり政府に指示し、解明に取り組むことを確認いただきたい

 鈴木宗男委員長「斉藤君の意見について、理事会に諮り、委員会できちっと対処していきたい。さらなる説明責任なり、情報開示も進めていきたい」

 −−有識者委員会報告は30年原則に基づく公開制度の再点検をすべきだとしている。早急に国会、政府一丸で取り組むべきだと思う。取りはかりを願います

 鈴木氏「理事会に諮り、委員会できちっと報告したい」

 −−西山参考人。沖縄返還における密約の代名詞といえます肩代わり問題、いわゆる財政負担問題についての発言がありました。財政負担の密約の一部にすぎないと。米国自身が沖縄にかかわる問題についての戦略を持って、いわゆる秘密金回収、財政回収に取り組んできた。米国の公文書が物語っている、という。具体的に米国の大きな方針は、どういう文書で示され、有識者委員会では触れられているのか、いないのかお聞かせください。

 西山太吉元毎日新聞記者「財政問題を400万ドルとか1600万ドルだとか、やれ米国に対する無利子預金だとかいう項目別に分けて分析しても、私は何にもならないと思う。有識者委員会は横に項目を羅列し、それぞれを述べているだけで。財政問題を含む密約の実態のほとんど氷山の一角にさわっていないと思っています。

 それは何といっても、1969年の佐藤・ニクソン共同声明における財政問題は、共同コミュニケから全部削除されました。全部終わっているのに全部今から始めると。ここから密約が始まるのですが、やはり根幹をなすのは柏木・ジューリック合意議事録です。柏木・ジューリック合意議事録は、米国においては徹底的に解明されていますし、私はその点で財務省が行いました調査は、外務省の調査よりもちょっとグレードが高いと思います。

 いま訴訟を起こしていますが、4月9日に判決が出ますが、われわれ原告を相手にあの報告書を出していただいている。それほど財務省は切迫感を持っているのが1つ。もう1つは、柏木・ジューリックを調べてみたが、なかったと。やっぱりない。吉野・スナイダーがないのと同じように、VOAに関する吉野・スナイダーもない。軍用機の補償の吉野・スナイダーもない。それにもかかわらず栗山メモはあるというのですから。これまた変な話です。

 栗山メモというのは1972年の衆院予算委員会で密約問題が沸騰したときの国会対策用の資料として作成されたもの。そのとき政府はなんといったかというと、密約は絶対ない、秘密書簡は絶対ないということで説明しました。そのときの国会対策のメモですから。それが秘密書簡がないということに利用されているように思いますけれど、私はそうじゃない。

 したがって、柏木・ジューリックメモが、はっきり私からいえば、今度の財政問題に対する米国の考え方、日本がそれを受けてどの程度で妥協し、どの程度それを飲み込んだかという全容を全部解明できる唯一絶対の資料であると思っています。その柏木・ジューリックメモ、財務省がグレード高いというのは、探してみたけれどもなかったと。やっぱり外務省の有識者委員会と同じように言っていますが、その後です。

 われわれは、あえて米国の公立公文書館に職員を派遣し、徹底的に調べた。そうしたら柏木・ジューリックと全く同じ文書が発見されたということを、わざわざ追加して言ってくれているんです。その文書の冒頭に、まずこの日米の財政問題というのは全部解決したということを示唆する、要するに柏木・ジューリック合意文書によって、これからの財政問題というものは全部ガイドラインができたから、これに基づいて解決されるということを書いている。それも今度の財務省の調査報告書にはわざわざ引用している。

 そして、それに基づいて無利子預金というものを全部解明していますが、はっきり言えば財務省はないことはないが、まずその時点ではあったんだよ、ということを明らかに示唆してくれているわけです。その点では非常に突っ込んだ分析をされていると思いますが、いずれにしても米国の財政問題に対する態度というものは3原則があって、まず第1に全部回収する。27年間の投下資本を全部回収する。それから同時に1ドルも出さないよ、と。返還においては。同時にこれだけじゃあダメだよって、今から新しい財政負担を日本に求めるという3つの項目に沿って分析していけば、全部解けていくんです。

 いわゆるランプサムというものを全部まず出して、日本側が全部それに応じた。その応じた内容というものが、最初はこんなに離れていたのが、とうとう最後はこんなことになった。そして結局その内訳作りを全部日本側が適当にやったという。それを国会に説明した。だから米国は自由にやりなさいと。われわれはつかみ金がいただければいいんだと。後の内訳はお宅が自由に作りなさいと。だから核抜き7000万ドルとなるわけです。核抜きは400万ドルもかかっていないんです。そういうふうに作られていきますからね。だから全部そういうランプサム、つかみ金だという方式でいけば全部解明されていく。

 その中で私が1番申し上げたいのは、無利子預金だとか、VOAの肩代わりであるとか、もう1つ軍用機の補償の肩代わりだとか、だいたい後ろ向きの解決、今までの決算書みたいなもの。ところが3億2000万ドルからはずされてしまった6500万ドルだけは完全に日本の将来に向けての安全保障の枠組みを形成するものなんです。新しい枠組みなんです。それが米軍施設改良工事費。それを私はわざわざはずしちゃって、全く国民に知られていない。

 しかも、あなた方、国権の最高機関の国会に対しても6500万ドルの税金を支出しているのが決まったにもかかわらず、一切報告しないで、どういうふうに予算を講じていたかと全く知られていない。しかも、それについて米国は詳細に報告しています。柏木・ジューリックの関連文書にみんな出てきます。

 ですから、そういう落差が激しすぎるんです。米国の文書管理とそれに対する認識と、日本側の文書の対応と認識は、あまりにも激しすぎる。それを埋めるのは、やはり国会における国政調査権を発動していただかなくちゃ、官僚機構のペースの中では到底その問題は解決されないというのが私の認識です。

 −−いわゆる沖縄返還に伴う日本側の財政、経済負担について、重要な柏木・ジューリック文書が財務省内を探したけど、なかったと。東郷参考人のファイルの情報公開法当時、廃棄をした。外務省の問題ですが、財務省側も大変ずさんであった。外相が改めて情報公開含め文書の保存、公開のあり方に取り組み始めたが、財務省自体も、政府自体がしっかりしないと、説明責任を含め、国際的関係も対応は大変難しいと指摘せざるを得ません。

 そこで、西山参考人が冒頭、日米関係が非常に密約で、何でも日米、日米ということにお気づきではありませんか、といわれた。西山参考人以外の方にお聞きしたい。密約問題に関して、日米で何かたくさん出てきますね、ということを西山参考人が最初に陳述された。このことについての事情や背景、理由、いかがでしょうか

 斉藤邦彦元外務事務次官「理由としては、日本と米国の関係が非常に多岐にわたっており、特に安全保障の関係におきましては、緊密な同盟関係がございます。その中で、米国の核の抑止力を最大限確保し、同時に日本の国民の間に存在します、極めて強い反核感情、こういう要素が存在しておりますので、ときには政治判断によって、一般に公表されない了解が存在したということであろうと思います。他の国との間には、そういう事情が必ずしもありませんので、日米間にだけそういうことが起こっていたという事情ではないかと思います」

 東郷和彦元外務省条約局長「斉藤参考人の意見と基本的に同じですが、やはり戦後の日本の安全保障は、どういう形でできてきたのかと考えますと、必要最小限の自衛力を持ち、それ以外の部分に関しては、日米同盟というものを基礎にして日本の戦後の安全保障を作ってまいりました。特に、冷戦のもとで米国の世界政策と、日本の必要最小限の自衛力しか持たない日本の政策との間に、いろんな面で緊張関係が生じたと思います。その結果の1つとして、この密約の問題も生まれてしまった。しかし、時代とともに解消されていく課程の中に、いま私たちはいるのではないかと思ってます」

 −−森田参考人に、あえて再度お聞きします。大平・ライシャワー会談などについて、ゴルフ場に行く車中の話があったが、もう少し情報提供いただけないか

 森田一元衆院議員「大平・ライシャワー会談後は、私も何も申しませんでしたし、記憶だと、すぐに外務事務次官を呼ぶということもなかったと思います。推測ですが、大変な問題なので、池田総理に報告はするけれど、具体的な方法は自分が考える以外にはないんではないかと。また、逆に自分が考えれば、何らかの方法があると当初は思っていたと思います。

 しかし、その後、大平総理というか政治家として考えておったことが3つあって、日本社会党の穂積七郎先生に対する日中国交正常化の見通しの問題と、蔵相をやった以降は自分が大量の赤字国債を発行したので、財政再建をこれからどうやるかということ。それから、この核の問題、ライシャワー会談の核の問題。この3つを考えていましたが、結局、国交正常化は実現し、財政再建の問題については成功しませんでしたけれど、総理になって一般消費税という形で世の中に提起することができたわけです。この核の問題については、最後まで考えたのだけれども、結局、田中内閣で処理しようとして、以降は報告がないまま他界したということです。ライシャワー会談の中身について細かく説明を聞いたことはございません」

 −−今回の報告の中で、沖縄の核再持ち込みについて密約ではないという有識者委員会の報告がありました。私は密約であろうということについて多くを言う時間はありませんが、再持ち込みは密約であるかないかについて、斉藤参考人と、東郷参考人にうかがう

 斉藤氏「私は有識者委員会の結論に同意するものでございます」

 東郷氏「私は密約であるというふうに考えております」

 −−東郷参考人は密約であると明快にお答えいただいた。なぜかということを再度おたずねしたい

 東郷氏「西山参考人からも話がありましたが、佐藤・ニクソン共同声明第8項。事前協議において米国から核持ち込みの要請があった場合の日本側の反応は、イエスもあり、ノーもあり得るかたちで第8項ができていると解釈していました。他方、佐藤・ニクソンの合意議事録は、再持ち込みの要請があれば必ず核を認めるとなっています。佐藤・ニクソン共同声明の内容を一歩超え、総理大臣として、こういう状況のもとでは核を必ず入れますと言ってます。

 その問題がいかに日本の国内で引き継がれたかは、私の理解では、日本の国内問題でして、米国との関係では、日本の総理大臣が米国大統領に対し、こういう状況のもとであればこうしますと言っている以上、通常の意味における約束と。国際法上の権利義務関係を設定する約束であるかは、いささか勉強が必要だと思います。しかし、常識的な意味で言えば、約束と言っていいことで、それが国民に対して伏せられていたわけで、密約ではないかと思う」

 −−有識者委員会、外務省調査は大変画期的なことだと思うが、改めて浮き彫りになったのは、冷戦崩壊後20年、情報公開法が施行されて10年、いかに日本の外交に関して知らされなかった、そのことが日本の国益に大きな損失があったのではないかと感じざるを得ません。

 これから解明しなければならない問題について、委員長にもお願いしたが、委員会での積極的な対応をすることが、日本の往来のありようを切り開いていく大変なことではないか。このことを申し添えます。

 鈴木氏「斉藤委員の発言は、しっかり理事会で受け止め、また委員会に報告します」

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